世界で一番美しい本

NHKで毎週日曜日に放送されている「日曜美術館」。

5月3日に放送された回がとても印象的だったので、

今日はそれについて書いてみたいと思います。

 

タイトルは「世界で一番美しい本 ベリー侯のいとも豪華なる時祷書」。

 

中世フランス王族の命で、80年に渡り複数の画家によって作り上げられた、

それはそれは豪華な書物。 

1年12月の情景がそれぞれ1ページに描かれており、

番組では、ページが1枚ずつめくられ、それぞれの絵の解説がなされます。

 

主に描かれているのは、重要な農作業や鷹狩などの貴族の行事で、

いずれも各月を代表する情景のようです。

それらが美しい色使いと緻密な絵で描き取られ、

当時の人々の暮らしを教えてくれています。

 

さらに面白いのは、それらの絵が、様々な象徴が用いられることで、

同時に「愛の喜び」をも暗示しているという、二重の解釈が可能な点。

なんと深く、そしてなんとロマンチックな!!

 

よく見ると遠景の城の様子までとても細かく描かれていて、

絵画としてじっくり鑑賞してみたいなあと、

思わずにはいられませんでした。

 

「世界で一番美しい本」といわれる所以は使われている材料にも。

牛皮紙に、世界中から集めた鉱石や象牙から作られた顔料など、超贅沢。

もちろん使用された技術も最高級とのこと。

 

中でも青がラピスラズリから作られていると知ってびっくり。

ラピスラズリは誕生石ということもあり知っていましたが、

まさかそこから顔料をが作られるなんて思いもしませんでした。

実際に鉱石から絵の具が作られる工程も紹介していましたが、

その光景を見ているだけで、とても贅沢で不思議な気持ちになりました。

 

この時祷書は、美術の専門家すらなかなか目にすることを許されない、

門外不出の書物だそうです。

そんな貴重で美しい書物をじっくり見せていただき、

心安らぐ贅沢で優雅な時間を過ごすことができました。

 

また、外出ができない今放送されたこの回に、

「世界で一番美しい本を一緒に読みましょう」という

優しいメッセージがこもっているように感じ、

とても暖かな気持ちになりました。

 

展覧会に限らず、様々な切り口でアートについて学ばせてくれる、

休日にぴったりの素敵な番組。

これからも楽しみにしています。

 

みさき